カナン「もう少しここで聞き込みを続けようと思うわ。
船員の捜索に協力しているって言ってもいいですよね。警戒されづらくなるはず。」
4人も行方不明になる事件だ。船内という限られた空間で目撃者がいない方が不自然だろう。闇雲に探すよりも乗客から情報を集めるのが効率がいいと思った。
それに正直、この頼りなさそうな船員と人目に付かないところを捜索するのは少々不安でもある。
シラートの話によると、コリーネと呼ばれる一団はなるべく他の乗客と接触させないように配慮しているらしく、メインホールに集めて別の者が聞き込みをしているらしい。
ではなおさらこの3階層での聞き込みが効果的だろう。
カナンたちは手分けをして、乗客への聞き込みを行った。
シラートは優秀で、通る人が少ないときは乗客の部屋に声をかけてより多くの人から情報を集めるように務めていた。
轟音と共に、船全体に衝撃が走った。
窓から熱風がゴォっと吹き込んできて思わず身をかがめた。デッキの方を見ると、まっ黒い煙が広がって海が見えなくなっている。
カナン「何今の!?爆発!!?」
焦げ臭い匂いが立ち込めてきた。ものすごい音だったし煙は真下から立ち上っているように見える。
感覚的にはすぐ下の階層で大きな爆発が起きたように感じた。
とっさに、ここから近い自分の客室のことが頭をよぎった。
すぐに移動した方がよいのか、じっとしていた方がよいのか判断できない。とりあえず荷物を確認するために自分の部屋に駆け込んだ。
部屋の中は荷物が飛び散ってぐちゃぐちゃになっていた。やはり、ここのほぼ真下で爆発がおきたのではないだろうか。
急いで貴重品を手提げのバッグに詰め込んで、部屋を出ようとしたところでハッと立ち止まった。
廊下がゴウゴウと炎が上がっている。
一瞬青ざめて立ちすくんだが、このままでは焼け死んでしまう。とっさに布団を引き剥がして体に巻き付けると、ドアに向かって走り出した。
が、転がっていた荷物に足を取られて前のめりに転倒した。
カナン「い、いやぁぁぁ!」
布団に炎が燃え移り、パニックになって叫び声を上げた。煙に巻かれた状態で大きく息を吸い込んだことで、一瞬で一酸化窒素中毒に陥り意識を失った。
バタリと倒れたカナンの体を炎が包んでいく。