カナンの部屋

今の衝撃で荷物の一部が崩れて散らかっている。

カナンは急いで貴重品を探して手提げのバッグに詰め込んだ。

火災で怖いのは煙だ、と父が言っていた言葉を思い出した。確か登山中に山火事の話を聞いたときだったか。

この部屋は客室の並びで奥まったところにあるので、通路に火災が来ていたら助からない。

落下の危険はあるが、煙に巻かれる可能性の低い船の外壁を伝って外に出ることにした。

ベランダはないが、装甲の継ぎ目が出張って横に伸びている。カナンはそれを足がかりにして、側面を這うようにして船の中心の方に向かって移動した。

デッキまでたどり着くことができ、平らな床に着地した瞬間に2度目の爆発がおきた。

デッキから身を乗り出して見ると、カナンの部屋の下あたりの1階層より少し低いところから煙がもくもくと上がっていた。

あそこで爆発があったのだろう。

その真上の1階層から3階層で壁伝いに火の手が見えるが、すぐにここまで広がってくることはなさそうだった。

安心してガクッと力が抜けた。

しかし、ゆっくりしているわけには行かない。消化や避難のために船員が動いているだろうと思い、カナンは中央付近の階段に向かって歩いた。