カナン「いえ、たぶんそこかしこで起きてる。
冷たいようだけど、関わっていられないわ。」

ムート「…。」

ムートはすっと男たちの方へ歩き出した。

ムート「ごめん、カナンさん。 俺、海上保安官を目指してるんだ。だからってわけじゃないけど、こういうときは弱者を助けるって決めてるんだ。」

ムートは、男たちの方へ走り出た。

ムート「あんたたち、やめてくれ!
人種が違うか何か知らないが、今は船内で揉めてる場合じゃないだろ!」

男「何だお前は!?」

ムートは、強引に男を引き剥がした。

男は抵抗しようとしたが、ムートにぐいっと手首を掴まれて振りほどく事ができない。

しかし、横から他の男がムートの腰めがけてタックルをしかけ、堪らず引き倒されてしまった。

相手は4人、あっという間に取り囲まれ倒れているムートに容赦なく蹴りを浴びせる。

男「おらぁ!さっきの威勢はどうした!?」

カナン「ちょ、ちょっと!やめて!」

カナンは見ていられなくなって、一人の男の腕を掴んで止めようとしたが、男は掴まれた腕を振りほどくと力任せにカナンを突き飛ばした。

そのまま船の手すりに背中から叩きつけられる。

カナン「あぅっ…!」

男「もう遅いんだよ!コリーネの奴らは捕獲して尋問する!
俺達だけじゃない、40人以上が動いてるんだ!お前はコリーネではないようだが、邪魔をするならとっ捕まえる事になってる!」

男は乱暴にカナンの髪を掴んで立たせると、羽交い締めにして仲間たちのところへ連れて行った。

数人がかりで取り押さえられ、手足を縛られると捕まったコリーネの人たちと共に一室に閉じ込められた。そしてそのまま、この先に待つ最悪の結末をただ待つことしかできなかった。