オープニング

出立の当日、埠頭へ着くとすでにたくさんの人が集まっている。数十〜百人くらいはいるだろうか。

カナンはこれから乗り込む大きな客船を見上げた。

カナン「わ〜…すごい」

新しい船体が朝日を浴びてキラキラ光っている。

旅行に行く実感が湧いてきて、自然と口元が緩んでくる。

シーナ「カナン!」

一緒に当選した友人のシーナがカナンを見つけて声をかけてきた。

シーナ「遅くなってごめん!もうそろそろ乗船時間だよね。」

カナン「私もさっき着いたところ。」

シーナ「わー!すごい船!私たちも乗船口に行きましょう!」

汽笛が鳴り、船から埠頭に向かって桟橋がかけられた。乗船の時間になったのだ。

カナンとシーナは顔を見合わせて、桟橋のほうに向かっていった。人混みに揉まれながらゆっくりと進んでいく。

改めて近くで見ると、なんて大きな船だろう。まるで映画の世界に入ったような気分になって、2人は高揚してじゃれ合いながら歩いた。

乗客が全員船に乗り込むのに10分ほどはかかっただろう。見送りに来ていた人たちが手を振り、船上のあちこちで歓声が上がっている。

船はゆっくりと動き始めた。