プロジェクトの凍結が決定した翌日、古見は部長の石狩に呼び出されて役員会議用の一室に来ていた。 石狩 古見くん、これを 手渡されたのは、簡単にクリップで留められた3枚の用紙だった。 1枚目は「辞令」、2枚目に以降はプロジェクトの損害に関する内容だった。その書面を読み進めていくうちに、古見の顔は真っ青になった。 古見 なんですか、これは… プロジェクトの損害を僕個人で負担する…? 石狩 そういうことだ。まさか知らなかったのかね。 石狩の説明によると、このプロジェクトのマネージャーに任命された際に特殊な契約の取り交わしがあり、その中に損害が出た場合の取り決めが書かれていたらしい。 古見 (契約書にサインしたのは覚えているが、正直内容は覚えていない…。 いや、こんな内容だったら思いとどまっているはず。 よく読んでいなかったんだ) 古見 こんな契約はおかしい! 支払うつもりはないぞ。 そもそも古見の用意できる金額ではなかった。 何度か問答をした末、石狩は静かにこう切り出した。 石狩 では、明日これから指定する場所に行くんだ。 指定された場所は、匙下電器産業の親会社である財賀グループの本社だった。 財賀グループといえば様々な事業を展開する組織だが、創成期にはかなり荒っぽい金融業をしていたらしく黒い噂も絶えない。 石狩 いいな、必ず行くんだ。 君が救われる可能性があるとしたら、それしかない。