デッキに出ると夕日に照らされた海が広がっていた。
舳先のほうに目を向けると、遮蔽物1つもない水平線が広がっている。否応なしにテンションが上がる景観だ。
コルチカム号は5階層になっている客船らしい。カナンの客室は3階層目にあり、デッキに出ると上の階と下の階層が見えて船の大きさを実感することができる。
シーナ「カナンなら柱をよじ登って、いろんなところに侵入できそうだね。」
カナン「いや、そんなことしたら、変人扱いされちゃうよ。」
カナンは父親の影響で登山とロッククライミングが趣味であり、その身軽さが友人たちの中で有名だった。
シーナ「そこいらの男よりよっぽどたくましいからな〜、カナンは。」
カナン「はいはい、どうせ女の子らしくないですよ。
頼れる殿方もいないし、この旅では私がシーナを守ってあげるからね。」
シーナは大げさに胸の前で手を組んで喜んでみせると、ギュッとカナンの腕に腕を回して寄り添って来た。
カナン「ちょっと、やめてよ!誰かが見たらそういう関係だと思われるでしょ。」
ふざけ合いながらしばらくデッキを歩いているうちに、昼食の時間が近づいてきた。