この船には1階層の船首側と船尾側にそれぞれ50席ほどのレストランがある。

今回のクルージングの乗客は180人ほど。一度に全員は座れないので、夕食は入れ替わりでビュッフェ形式の食事になっていた。

レストランへ着くと、すでに3割ほどの人達が集まっていた。

乗船の時に見かけた顔もちらほらいる。これから何日かこの船で過ごすのであれば、他のグループとの交流もあるのだろうか。そんなことを考えながら、カナンたちは料理が並んでいるテーブルを物色しながらウロウロ歩いた。シーナはフルーツとサラダのテーブルの方にふらふらと歩いていった。

カナンは、こういう時は肉から食べると決めている。迷わずにローストビーフやステーキ、フライドチキンなどが並んでいるテーブルに近づいていった。

手のひらよりも一回り大きい皿にこんもりと肉料理、そしてわずかばかりの生野菜を添えて座る席を探すと、シーナが既に窓際の真ん中あたりの席で手招きしている。

シーナ「この席よくない?入ってくる人もよく見えるし、ホール全体見渡せるわ。」

カナン「なるほど、いい男がいたらすぐにわかるってわけね。」

シーナはこういう時は抜け目がない。

席に座って寝るときのことやこれからの旅のことを話がら料理をほおばり始めた。

どの料理も素晴らしくおいしかった。カナンたちは特別貧しいと言うわけでもないが、明らかに普段口にしているものとはランクの違う料理だ。

??「お隣よろしいかしら?」

若い女性が声をかけてきた。スラッと背が高く、タイトなドレスを見にまとっている。

カナン「どうぞ。」

特に怪しい人物には思えなかったので、カナンはとっさに空いてる席に手を向けた。

女性はニコッと笑うとゆったりと席に座った。同性ではあるが、何とも女性らしい仕草に目が奪われた。

??「ごめんなさいね突然。
せっかくの船旅だから1人で食事するのが寂しくなっちゃって同世代の子がいたから声をかけちゃったわ。

カナン「私たちも他の乗客はどんな人たちなんだろうって思っていたところなんです。でもお一人で参加されたんですか?」

??「実は一緒に来るはずだった友人が急に都合が悪くなっちゃって、もったいないから1人で来てみたんだけど、さすがに1人で参加してる人は少ないみたいね。」

3人はしばらく談笑を交わした。このクルーズ船の豪華さに驚いたことや参加した経緯など、他愛もない内容だが旅先での出会いは特別な楽しさを感じる。

女性はユークレースという名前で、おっとりとした話し方の女性だがカナン達よりも明らかに大人っぽい雰囲気を醸し出している。同世代とは言っているが、少し年上だろう。

ユークレース「ところであなた達、濃い緑色の服を着ている人が多い一団とは交流した?」