オープニング

カナンは手すりを掴んで階段を降りだした。

少し狭いが、照明や階段の作りも客用のフロアと同じできれいなので、乗組員用の通路ではないようだ。

階段を下りきったところに豪華かな拵えの扉がある。

「ーーーッ」

カナン「!?」

厚い扉ごしなのでかすかだが、扉の向こうから女性の悲鳴のような声が聞こえた。

???「君たち、ちょっといいかな!」

背中から男性の声がしてカナンはビクッと立ち止まった。口調が淡い訳では無いが声量が大きくて迫力があった。振り向くと船員の服を着た大柄な男性が立っている。

男性「私はゴートン、この航海の船長です。
そっちは一般客は立ち入りできないフロアだ。すいませんが整理番号を尋ねても?」

カナン「あ、すいません。整理番号はE-17で、普通の乗客だと思います…。」

シーナはいつの間にかカナンの後ろに回り込んでいる。こういうときはだいたいカナンにお任せだ。

ゴートン「では、すまないがこの下のフロアには入れない。お引き取り願おう。」

カナン「はい、売店を探していて、つい。」

ゴートン「そうか。売店はこの通路を真っすぐ行って…」

売店の場所を教えてもらって、お礼を言う。

カナン「あの、この下のフロアは何があるのですか?」

ゴートン「この下は一部の特別な乗客の部屋だ。見学しても面白いことはないぞ。」

2人はそそくさと教えてもらった方へ歩き出した。