カナンはホールの中央付近にいる男性グループに聞き込みをすることにした。
カナン「突然すみません!
船員の方の手伝いで乗客の皆さんにお話を聞いていまして、少しだけご協力お願いします。」
カナンは首から下げたカードホルダーをスッと前に出して見せた。
この船の名前と「STAFF」と書かれたネームカードが入っている。聞き込みをするにあたり、乗客に警戒されないようにゴートンが持たせてくれたものだった。
明らかに歓迎されていない空気だ。
カナンはゴートンから聞いたコリーネの人たちのことを思い出した。自分たちの一族以外の者には、警戒心を持っているように見える。
カナン「あの、実は昨晩乗客の何名かが行方不明になっていまして。
何か不審な人を見かけたり、物音を聞いたりしませんでしたか?
または、お知り合いで行方がわからない方などはいませんか?」
その時、すぐ近くでヒステリックに大声を上げる物がいた。
??「だから聞いてくれ!
昨日の夜このコリーネの男が僕の友人と一緒にいるのを見たんだ。そしてその友達は行方がわからなくなってしまった!」
声のほうに目をやると、小柄な男が船員に向かって大声でまくし立てている。傍らには緑色の服の男が立っていた。
何とか眺めようとしているようだが、ロジーと呼ばれた男はさらに続けた。
ロジー「だっておかしいじゃないですか。僕の友人はれっきとしたこの国の国民なんですよ。なんでコリーネなんかと一緒に歩くことがあるんですか。
男「だから道に迷っている様子だったので、声をかけてバーの場所を教えてあげたんだ。
その時に階段のところまで少し連れ立って歩いただけじゃないか。」
ロジー「この人は嘘を付いています!
あんな遅い時間に一人でバーに行くなんておかしいじゃないか。
だから、こんな低俗な奴らと一緒の船に乗るのは嫌だったんだ。」
シェーン「横から失礼します。私はシェーン。
私もその者から話を聞きましたが、眠れないので一人でバーで時間を潰そうとしたと言っていたそうですよ。
特に不自然だとは思いませんが。」
カナンが話しかけていたコリーネの男のひとりが、見かねた様子で会話に割って入った。
もう一人の男が自然に立っていた位置を譲ったところを見ると、まとめ役のような立場の人物なのかもしれない。
ロジー「そんな適当な言い逃れで納得すると思ってるんですか?
私は乗組員の方たちで捜索隊を組織してもらい、この下賤な一派の部屋をすべて暴くことを要求します。」
あのロジーという男から話を聞きたいと思ったが、あの場に入っていくのは気が進まない。
ゴートンと合流する時間までに何組か話を聞きたいので、一旦その場を離れることにした。