昨日、主催者ザイハラのスピーチを聞いたメインホールに来てみると、緑色の服の人たちが何グループかに分かれて集まっていた。
ユークレースさんの言っていたコリーネの部落人たちだ。
1階層の中心にあるメインホールは待ち合わせ場所に使われやすいと思ったのだが、この一団の人が多いせいで他の一般客はほとんど居なかった。
声をかけられて振り返ると、さっき別れたばかりの船長ゴートンがあきれた顔で立っていた。
カナン「…い、いえ、ちょっと寄り道しただけです。」
ゴートン「本当かい?
正直に言うと、さっきの君の行動を見たら部屋に戻って大人しく待っているようには思えなかったんだ。
ひとりで捜索をしようとしているんじゃないのかね。」
カナン「すいません、その通りです。じっとしていられなくて…。
乗客の人たちに話を聞いて、何か手がかりがあれば船長さんに報告しますから。」
船長は少し考え込んだ後、カナンの目を真っ直ぐ見て言った。
ゴートン「では、力を貸していただきたい。
実は船員のほとんどは船内の仕事で手が一杯で、捜索に当たれるものが少なかったんだ。」
カナン「あわかりました。なんでもします。」
ゴートン「無鉄砲な若者は嫌いじゃないが、くれぐれも無茶はしないでくれよ。」
ゴートン「では、とりあえず私と一緒に行動して聞き込みを手伝ってもらおう。
実はこのホールには、コリーネ部落の⼈たちに集まってもらっている。他の乗客と一緒にするとトラブルの種になりかねないから食事も時間を分けているんだ。
聞き込みもまとめて行いたい。」
ゴートン「コリーネの人たちのことはよく知らないようだな。
無理もない、特に関わらずに生活しているひともたくさんいる。」
ゴートンの話では、30年以上前に起きた大戦時に敵国の捕虜としてこの国に残った人とその次の世代の一族のことを指すらしい。
文化レベルが低く粗野な性格のため、心よく思わない人が一定数いるのだとか。
ゴートン「特に彼らが持ち込んだとされる感染症に苦しんだ人やその家族は、すごく嫌っている人が多い。
ただ、話してみると普通の人ばかりだからあまり構えずに普通に接した方がよいと思うよ。」
ホールには緑の服の一団が何グループかに分かれてガヤガヤと話している。