ロジー「不幸が集うこの状況を、何度避けられたらと祈ったことでしょうか。
わかりきった問題を先送りにしてきたことに、天から罰が下ったのです!!」
ロジーと名乗る青年が、メインホールで演説を始めたのはちょうど日が落ちた頃だった。
急なことだったが、皆少しでも情報を求めていたので数十人の乗客が集まっている。船員たちも演説を止めるようなことはせず、ホールの隅に集まっていた。
爆発の消火活動は乗客も参加して行われた。死者・行方不明者はさらに14人出たらしい。
船員・乗客を問わず、恐怖と猜疑心が飽和して皆疲れ切った顔で演説を聞いている。
ロジー「火は消し止めることができましたが、今この船は動力を失い漂流しています。
さらに、通信機器の不良で運営会社とも連絡が取れない状況ということがわかりました。」
ところどころで小さな悲鳴が上がり、乗客が一斉にざわついた。
船が流されていて救助も呼べない?
それでは、本当にこのまま全員助からない可能性もある。皆の想像よりも遥かに状況は悪かった。
ロジー「本来リーダーシップを取るはずの船長は何者かに殺害され、主催者のザイハラ氏も怪我をされています。」
船員にもこの差別的な主張を支持する者がいるらしい。演説を黙認しているという事実が、この情報が正しいことを示していた。
船長が殺害されたことで、船員たちの統率が失われているというのもあるだろう。
ロジー「コリーネ部落は汚れた血を持つ者たち。同じ人の形をしているだけのデミ・ヒューマンなのです。
私たちの博愛につけこんで悪意を育み、今正体を現そうとしている。」
乗客「そうだ!あいつらとの船旅なんて、はじめから陰謀だったに違いない!」
乗客「一人残らず捕まえておかないと、安心できない!」
一部の乗客は演説に同調しはじめている。
どうするべきかは全くわからないが、巻き込まれたくはない。この場を離れることにしよう。