どうやってシーナを探そうか。この状況では頼れる人もいない。独りで何ができるだろうか。
正直、少し横になって休みたいところだが、自分の客室もなくなってしまった。
ホールには居たくないので、とりあえずデッキに出て考えることにした。
波風が少し肌寒い。昨日はあんなにきれいに見えた夜の海が、ひどく恐ろしく感じた。
ムート「よっ!
なんかきな臭いことになってるから、無事でよかったよ。
友達は一緒じゃないの?」
ムート「実は俺もワシリのやつを探してるんだ。
あいつはどうやら普通の客室じゃないらしくて、部屋番号とかは教えてくれないんだよ。
明日のランチに会おうって約束はしてるんだけど、行方不明者とかでてるから少し心配で。」
ムート「カナンさん、シーナちゃんを探すの手伝うから、一緒に行動しないか?
物騒なことに巻き込まれないとも限らないし、君はしっかりしてそうだから俺も心強いんだ。」
確かに、女ひとりで行動するよりはよほど安全だろう。ムートが何か企んでいる可能性も無くはないが、話た印象では信用できそうに思える。
ムート「よし、決まりだ!
でも探すと言ってもどうしたらいいのか。
船員の人たちも聞き込みとかはしているみたいだし…。」
乗客「大人しくこっちへ来い!
お前らが何か隠してるのはわかってるんだ!」
突然、荒々しい声が聞こえてきた。
見ると手すりの近くで、4人の男が2人の中年女性の服を掴んでどこかへ連れて行こうとしている。
女性は薄い緑色の服装から、コリーネの人のようだ。
さらに、少し先にある通路の入口からも罵り合いが聞こえてくる。
演説に感化された乗客が、コリーネの人を捕まえようとしているようだ。
カナン「もうこんなことに!」
ユークレース「ホールでの演説でも言ってたが、あの緑色の服の人たちが悪者なのか?」
確証はないが、状況的にはコリーネの誰かが誘拐事件を起こしている可能性もある。
ムート「でも、一方的に乱暴するのは見ちゃいられないぜ。助けよう。」