ワシリの部屋

カナン「このフロアの乗客の部屋を見ることはできないかしら?
乗客に聞き込みをしても手がかりがないらしいけど、このフロアのことはほとんどの乗客は知らないはず。」

ワシリ「それは…。通路や食堂を調べるくらいならくらいいいけど、客室も見るとなるとあまりおすすめできない。
全員知っているわけじゃないけど、さっき言った通り、関わり合いになりたくない人や、個人ボディガードを雇ってるようなお金持ちもいる。」

カナン「じゃあ、あなたの親戚の知り合いとかは居ないの?誰か紹介してくれるだけでも…。」

ワシリ「親戚?
…知り合いはいないんじゃあないかな。このツアーとどういう繋がりがあるか、僕もよく知らないんだ。」

ナンはなんとなく違和感を憶えた。

カナン「(今、紹介者の親戚のことを忘れていたような感じだったけど…)」

その後しばらく話しても、良い案は出なかった。船員に頼んで捜索してもらおうにも、コリーネの件で意見が分かれているのでは、見込みが薄いだろう。

カナン「じゃあ、調べられるところだけでも…」

そう言って立ち上がろうとした瞬間、カナンは急に目眩がしてガクッと力が抜けるのを感じた。

ワシリ「大丈夫ですか?」

カナン「す、すいません…。ちょっと目眩が。
なんだか、眠いかもです…。」

ワシリ「そうですか、少し休んだ方がいいのでは。」

隣を見ると、ムートが机に突っ伏している。

ワシリはスッと立ち上がると、壁際に歩いて電話の受話器を取った。

ワシリ「もしもし、僕だ。すぐに来てくれ。」

カナンは朦朧としながら、なんとか意識を保とうと首を振った。

と、入口のドアが開いてスーツの男が2人入ってきた。

手にはロープを持っている。

カナンは自分の舌先をガリッと思い切り噛んで、なんとか意識を保とうとした。

しかし体は言うことを聞かない。

2人は手を背に回した格好で手首と足首を縛り付けられ、ドサッと部屋の隅に転がされた。