ワシリの部屋

少年の言っていた部屋は、無骨な拵えのドアだったのですぐにわかった。

中は薄暗く、ドアと同じく明らかに客室とは作りが違う。こもった空気がひんやりと感じた。

カナン「何なの、この部屋は…」

部屋の置くに人のような影を見つけて、カナンは立ち止まった。

動く様子がないので恐る恐る近づいてみると、椅子に括りつけられた女性だった。

カナン「シーナ!」

ぐったりとして顔は見えないが、間違いなくシーナだった。

駆け寄って抱き起こすと、小さく身を捩る反応があった。

シーナ「…カナン。」

カナン「シーナ!大丈夫!?」

シーナ「大丈夫…。足が痛くて…ちょっとボーっとするだけ。
あいつは?あの男はいないのよね?」

カナン「ワシリさんのことね?」

シーナはコクコクと頷いた。

カナン「大丈夫、ここにはいないわ。」

震えているシーナを抱きしめて、背中をぽんぽんと叩いた。

見ると左足のつま先が黒く血で染まっている。

ムートと2人で拘束を外したが、よほど足が痛むらしく一人で移動は難しそうだ。