右舷側のデッキは人がまばらだった。

できるだけ人が少ないところで手すりにもたれて次巻を潰すことにする。

すると、一人の若い女性がいきなり声をかけてきた。

女性「あの〜」

レン「…え、なんですか?」

20代の女性、一般乗客だろう。

女性「いや、なんだか気分が悪そうだなって。よかったら酔い止めの薬あげようか。」

レン「いえ、大丈夫です。」

女性「でも顔色悪いし、お水だけでも飲んだら?」

意味もなくに世話を焼きたがるタイプのようだ。これは受け入れないほうがいいだろう。

レン「……いえ、大丈夫です。」

女性「そう。
ところで一人ってわけじゃないわよね。ご家族とはと一緒じゃないの?」

レン「一人ではないですが、今は匂いに酔ったので離れているだけです。」

女性「匂い?」

もういいだろう。

レンは鬱陶しくなって、答えずに去ることにした。

適当に時間を潰したらメインホールに戻ろう。

カナン「あ、ごめんね!騒がしくっしちゃって!」

レン「…。」