ロジーと名乗る青年が、メインホールで演説を始めたのはちょうど日が落ちた頃だった。
急なことだったが、皆少しでも情報を求めていたので数十人の乗客が集まっている。船員たちも演説を止めるようなことはせず、ホールの隅に集まっていた。
シェーンとレンは上着が見えないようにジャケットを羽織り、柱の陰から演説を聞いていた。
ロジー「火は消し止めることができましたが、今この船は動力を失い漂流しています。
さらに、通信機器の不良で運営会社とも連絡が取れない状況ということがわかりました。」
船はコントロールを失って漂流、無線も使えない。
さらに、この航海の船長が死亡したこと、主催者ハクトウが何者かに襲われて怪我をしたことも伝えられた。
ロジー「コリーネ部落は汚れた血を持つ者たち。同じ人の形をしているだけのデミ・ヒューマンなのです。
私たちの博愛につけこんで悪意を育み、今正体を現そうとしている。」
乗客「そうだ!あいつらとの船旅なんて、はじめから陰謀だったに違いない!」
乗客「一人残らず捕まえておかないと、安心できない!」
シェーン「最近では珍しい、かなり過激な思想だな。
この非常事態がそうさせたのか…」
コリーネの男たちは、今朝のように一般乗客が集団で来るかもしれないと予見し、2階層の客室がある通路の入口を常に4人以上で見張ることにした。
レンも部屋にいるきにはなれないので、廊下をウロウロしている。
男「シェーンさん、大変だ!
この階層にいない俺達の仲間を、一般の住人が無差別に捕まえて尋問しようとしてる!」
シェーン「くそ、もうそんなことになっているのか。」
男たちは話し合って、2階層以外を出歩いているコリーネの人たちを助けるために何組か見回りに行くことにした。
レンの志願ははじめ反対されたが、シェーンと同行することで許された。