レンが目を覚ますと、部屋にシェーンの姿はなかった。
顔を洗って支度をしても戻って来ない。
もうすぐ朝食の時間が終わってしまう。人の多いところには行きたくないが、朝食と夕食は指定の時間にレストランに行って食べなければいけないというのに。
部屋のある2階層にはいないようだったので、1階層に降りた。
すると、メインホールに人だかりができている。
一般の乗客と船員の中に、コリーネの人も数人混じって、わめきながら議論をしていた。
シェーンもその近くにいた。
ロジー「だっておかしいじゃないですか。僕の友人はれっきとしたこの国の国民なんですよ。なんでコリーネなんかと一緒に歩くことがあるんですか。」
男「だから道に迷っている様子だったので、声をかけてバーの場所を教えてあげたんだ。
その時に階段のところまで少し連れ立って歩いただけじゃないか。」
ロジー「この人は嘘を付いています!
あんな遅い時間に一人でバーに行くなんておかしいじゃないか。
だから、こんな低俗な奴らと一緒の船に乗るのは嫌だったんだ。
コリーネの男を庇うように、シェーンが前に進み出た。
シェーン「横から失礼します。私はシェーン。
私もその者から話を聞きましたが、眠れないので一人でバーで時間を潰そうとしたと言っていたそうですよ。
特に不自然だとは思いませんが。」
ロジー「そんな適当な言い逃れで納得すると思ってるんですか?
私は乗組員の方たちで捜索隊を組織してもらい、この下賤な一派の部屋をすべて暴くことを要求します。」
シェーン「船員に要求するのはご自由にされるとよいでしょう。
その時は改めて対応致します。
代わりに、まるで自警団のように私たちの仲間を勝手に尋問するのはやめていただきたい。」
どうやら、コリーネの男の一人が何かしらの犯罪を疑われて、一般乗客が勝手に尋問しようとしたところに、シェーンが割って入ったらしい。
諍いは解散し、レンを見つけてシェーンが近寄ってきた。
シェーン「部屋に戻ろう。
お前はしばらく2階層から出ないほうがいい。」
レン「…ごめんおじさん。
朝食の後は昨日会った子のところに行く約束をしているんだ。」