カナンの部屋

部屋に戻ったカナンたちは、備え付けの小さなシャワー室で交代で体を拭いたあと、少しくつろいで就寝することにした。

カナン「次の港に着くのは明後日だったよね。明日はカフェに行って、それから何をしようかなぁ。」

シーナ「そうだね。夜は何か催し物があるみたいだけど、船の旅ってずっと自由時間なんだ。」

2人はあれこれと話し込んでいたが、そのうちどちらからともなくベッドに入った。慣れない遠出と旅行にはしゃいでいて思ったよりも疲れてしまったようだ。

カナン「……。」

カナン「…んん。」

カナンは夜中にふと目が覚めた。

もう一度寝ようとするが、なかなか寝付くことができない。旅行初日で、疲れているが気分が高揚しているのだろう。

カナン「…はぁ。修学旅行の中学生じゃないんだから。」

もう一度寝ようとしてしばらく目を閉じてみたが、一向に寝付けないので諦めて船内を散歩することにした。ジャケットを羽織ってシーナを起こさないようにそっと外へ出る。とりあえずデッキのに行ってみよう。

デッキに人影はなかった。潮風を浴びようと手すりに近づくと、地平線まで真っ黒な海が広がっている。心地良いような恐ろしいような、不思議な気持ちになる光景だった。

寝ぼけた中頭で、ぼんやりと明日のことを考えながらしばらく海を眺めることにした。

「ガタガタッ!」

「〜〜〜…!」

カナン「!?」

物音がした。それに…叫び声のようなものが聞こえた気がする。

カナン「…何、今の。
気のせいかな。」

しばらく耳を済ませてみたが、もう何も聞こえてこない。ぼんやりしていたので確信はなかったが、船尾側の客室のある廊下の方から聞こえた気がした。

恐る恐る船尾の方に歩いて行き、客室に続く廊下の方を覗き込んだ。

その時、スッと廊下の奥を小さな影が横切った。

カナン「子ども?」

部屋を出る時にちらっと見た時計は午前2時を過ぎたくらいだった。こんな時間に一人で歩くなんて。いや、自分もそうなのだが…。